川﨑木珠ブログ BLOG

2017年3月28日

初心忘るべからず

先日、ご来店くださったお客様から念珠のオーダーをいただきました。
信楽焼で道具(親玉・四天玉)を作って来るから、
それを入れた浄土宗の念珠を[松]で作ってほしい、とのご依頼でした。

そこで道具が焼き上がるのを待って、
脂ののったとびきりの[肥松]でお作りさせて頂きました。
松脂がまるで琥珀のように美しい良材です。

また、信楽焼は、古くから滋賀県甲賀市信楽を中心に作られる炻器で、
日本六古窯のひとつに数えられます。
その伝統的な焼き物と[肥松]とのコラボレーションで
大変美しい念珠に仕上がりました。

奥様とお嬢様のお揃いの念珠です。

そんなとき、趣味でお茶を嗜むスタッフから、
このご依頼主様は信楽焼の窯元の高橋楽斎先生だと教えてもらいました。
そんなこととはつゆ知らず、大変失礼なことをしてしまったと思い、
休日を利用して念珠をお届けにあがりました。

ご主人の高橋楽斎先生はちょうど来客中とのことで、
奥様とお嬢様が丁寧に対応してくださいました。
普段お仕事をされている釜も見せて頂きながら
ひとつひとつ説明していただきました。

こちらは「登り窯」。

こちらは蛇のように長い「蛇窯」。

こちらは「蛇窯」の中です。

こちらは奥行きの狭い窯で、
炎が奥の壁に当たってもどってくるので「イッテコイ窯」といいます。

今ではガスの火で焼かれるところが増えてきている中、
こちらでは昔ながらの薪を使って焼き上げているとのことでした。
その中でも[松]の薪で焼くと青緑色のビードロ釉と呼ばれる
古信楽の代表的な質感が生まれるのだとか・・。

作品も見せていただきました。

焼き物の景色(柄)を見れば、
釜のどの位置にどの様に入って焼かれたものなのかが分かるのだそうです。
窯の炎の具合や様々な要素によって生じる偶然。
まさに土と炎が織りなす“わびさび”の趣を今に伝える素晴らしい芸術です。

そんなお話しを聞く中で、
奥様とお嬢様の焼き物に対する愛情がひしひしと伝わってきました。
そして、私はお店でお客様と向き合うとき、
ここまで商品に愛情を持って接していただろうかと、
ふと我を顧みて恥ずかしくなりました。

大変有り難い貴重な体験をさせて頂き、
感謝の気持ちいっぱいで帰路につきました。
この日の気持ちを忘れず、「初心忘るべからず」で
これからの仕事に真摯に向き合っていこうと思います。

八幡堀石畳の小路店 店長 フジタ

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