2017年1月17日
難儀な難儀な難を転ずる「南天」の数珠作り
毎年秋になると、工房の庭木のお手入れに来て下さる庭師さんがいらっしゃいます。
その方が「南天の木でお数珠がつくれないか」と木を持ち込まれました。
南天の木には邪気を払う力があるといわれ、昔から庭の鬼門などに植えられてきました。
また、「南天」という名が「難転(難を転ずる)」に通じるとされ、
縁起木としても大変親しまれています。
しかし、南天の木はご覧のとおり非常に細く枝のようなものなので、
数珠玉に挽き上げるには決して適した材ではありません。
けれど、せっかく縁あってお預かりした木。
いつもお世話になっている庭師さんの喜ぶ顔も脳裏に浮かび、
年末年始の時間を利用して作業を進めてみました。
なにぶん、南天の木で数珠を作るのは初めてのこと。
神経を研ぎ澄まして材を挽いてみました。
あまりに細いものなので、怪我をしないように、
慎重の上にも慎重を重ねて作業を進めました。
2つ割りするだけで冷や汗が出ました。
思わず「あ~こわ」とつぶやきました(笑)
玉のサイズに合わせて、何種類もの厚みの板に挽き上げました。
南天に関しては、ここまでくれば作業が半分終わったのも同然です(笑)
この板から玉の木取りを加工します。
これは、あえて幹を輪切りにして加工したものです。
果たして板引きからと輪切りからと、どちらがいいものかと思案しているところです。
珠挽きは企業秘密につき、ご想像にお任せいたします。
そして、挽き上げた珠を最終的にバフで磨いて仕上げていきます。
実は、浄土宗のお数珠をお作りしているところなのです。
浄土宗の数珠はご覧のとおり2つの輪からできています。
そのうちの1つには、間に28個の小さな玉が挟まっています。
この小さな珠を挽き、磨き上げるのがとても大変でした。
と同時に、左の上に見えている小さな10個の平玉が、房に付くのですが、
これがまた輪を掛けて大変でした。
あ~疲れた(笑)
以上の珠に房を付けてお数珠に仕立てたものがこちらです。
掛かった苦労と、あまりにも立派な仕上がり具合に、庭師さんにお渡しするのが惜しいような、
手元に置いておきたいような、複雑な心境になりました。
昨日その庭師さんが引き取りに来られました。
「ありがとう!」と嬉しそうに目尻を下げて満面の笑みを浮かべてお礼を言われた途端に、
それまでの苦労も飛んでいきました。
あのお顔を見せていただいたら、職人冥利につきるなぁと、心底感動しました。