2025年10月14日
金木犀(キンモクセイ)の木から生まれた念珠
街を歩いていると、どこともなく漂う甘い香り。
香りの正体は「金木犀(キンモクセイ)」。
その香りは秋の訪れを知らせてくれるかのようです。

先日、お客様より「金木犀の木で念珠を作ってほしい」とご依頼をいただきました。
お父様がご自宅の庭に植えられた金木犀で、
毎年その花が咲くのを心待ちにされ、
甘くやさしい香りを家族で楽しまれていたそうです。
しかし、新たに木を植えることになり、庭が少し手狭になったことで、
やむなく金木犀を伐採することに。
「思い入れのある大切な木を、ただ捨ててしまうのはかわいそう」
そんなお気持ちから、念珠として形に残したいとご相談をいただきました。

金木犀の木肌は、花の鮮やかな橙色とは異なり、
とても上品でやわらかな白。
加工してみると、木玉は淡いアイボリー色に仕上がりました。

お母様の分も含め、二連の念珠を心を込めてお作りいたしました。


長年ご家族を見守ってきた金木犀が、
これからはお手元で静かに寄り添うかたちとなりました。
木の命が新たなかたちで生き続ける——
そんなあたたかなご縁を感じたお仕事でした。

